薄紅の色懐かしむ暇なく 散り果ててなお緑まばゆし
滴塵024
本文
薄紅の色懐かしむ暇なく 散り果ててなお緑まばゆし
形式 #和歌
カテゴリ #5.自然・風景
ラベル #桜 #春 #自然現象 #光 #無常
キーワード #散る #薄紅 #緑 #移ろい #季節
要点
桜の薄紅が散っても、緑がまぶしく残る自然の移ろいを詠む。
現代語訳
薄紅色の桜を懐かしむ暇もなく、花は散り果て、緑がまばゆく輝く。
注釈
薄紅(うすくれない):桜の花の色。
懐かしむ暇なく:散る前の美しさを惜しむ間もなく。
緑まばゆし:桜の葉が茂り、緑がまぶしく輝いている。新緑の力強い生命力。
桜の散る様子と新緑の眩しさの対比。
桜:無常の象徴。
解説
春の移ろいを通じ、自然の循環や無常を表現。花が散っても次の命が輝くことは、生命の連続性と変化の必然性を伝える。景物描写に哲理を重ね、自然と心象が融合した和歌。
深掘り_嵯峨
滴塵022・023で描かれた無常の悲しみから、一歩踏み出した境地を描いています。桜が散るという「死」の悲哀に浸る間もなく、「緑まばゆし」という次の生(生命力)が力強く現れている、という生命のダイナミズムを捉えています。
これは、生滅変化(無常)は悲しいだけでなく、次の生を準備する不可欠なプロセスであるという、仏教的な輪廻の肯定にも繋がる思想を表現しています。悲哀と希望、そして力強い肯定が同居する歌です。